エスパー・ソルジャー・ジュン

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                                           VOL、3
                                     COL,23 銀河歴584年


                       JUN OF PASS AWAY DREAM 後編3



 夕食も終え、のんびりと星間通信ニュースを見ていたジュンの家のドアがノックされた。
 「どうぞ。 鍵はかけていませんから、入ってください。」
 「では、邪魔させてもらいます。」
 ドアの外にいた者が、そう言うと入ってきた。
 ジュンは、開いたドアの方に向かって顔を向けた。 そこにいたのは、連邦の制服を着てこちらを覗いているジュンそのものだった。
 「もう一人の自分。?! 」
 ジュンは目を疑った。
 「驚いたようだな。 私はジュン。 この世界において最強のソルジャーと呼ばれている男だ。」
 ジュンは、家から飛び出した。
 「自分のクローンか。 何のためにここにきた。」
 そう言うと、ジュンは身構えた。
 「確かに私は、あなたのクローンですが、この世に二人もジュンがいては困るのです。 したがって、あなたを殺します。」
 そう言い終わると同時に、サイコ・セイバーが、ジュンめがけて飛んできた。
 「偽物に、いや、自分に負けるわけにはいかない。」
 ジュンは、セイバーをよけつつ、クローンめがけて高純度のエネルギー。・ボールを投げ続けた。
 だが、それをエネルギー・吸収・ボールで消していく。
 ジュンとクローンの能力はほぼ同じだった。 しかも、考え方も同じなため、次の攻撃も同じものだったりした。
 衝撃波が、刈り残した麦を焼いていく。 衝撃波によって炎があがるが、次の衝撃波によって鎮火する。
 ついに二人は、白熱と化し高温の中で組み合った。
 そして、次の瞬間。 ものすごい悲鳴が上がり、白熱と化した炎が天を焦がした。
 炎は、今までそこにあったものすべてを飲み込み、鎮火した。 西の空が明るく輝き始めるのとほぼ同時に。
 
 今まで、その様子を隠れて伺っていたミデイアは、鎮火したあとにたつと、そこに残ったひとつまみのすすだけが残っていた。
 「ふふふ。 これでいいのよ。 永遠の時の流れの中に生きるなんて、不老不死だなんて、そもそもが夢なのよ。
 ジュン、あなたは幸せだわ。 もう生きることをしないでいいのだから。 ふふふふふふ・・・・・・・。」
 ミディアは、すすを天にかざし、当たりに播いた。
 「もうこの世界にジュンはいないの。 私が殺したのよ。」
 ミディアは、携帯していたポケット端末を開くと、
 「ビッグ・エス。 プランは終了したわ。 私を移送して。」
 と言うと、光に包まれた。
 
 「何処にいたんですか。 私の研究していたものが、まだ届いていないんで、探していたんです。」
 「ごめんなさい。 ちょっと所用で出ていたの。 ところで、あのクローン細胞がまだ届いていないんですって、
すぐに搬出したはずなんだけれど。 一緒に来て、確認しましょう。」
 メディチは、ミディアとともに研究室に行った。
 「あら、何かの手違いがあったみたいね。 すぐ搬送するわ。 誰か、この部屋の機材を搬送して。」
 ミディアは、デスクの端末に付いているインターホンで連絡を取った。
 「それより、あのクローンはどうなさったのですか。 もう歩いていても良さそうなのに。」
 「ここだから許すけれど、最終段階で、パニックを起こして死んでしまったわ。」
 「それは残念なことをしました。」
 「いいのよ。 あそこまで成長していれば、かなりのデータがとれたのだから。」

 地球を発進した定期便が次々と宇宙空間で行方不明になるという連続事件が起こった。
 本部ではエスパー犯罪ではないかと考え、ミディアに調査依頼が来たのだった。
 「ミディア。 この前の時とは違って、一気に数台の定期便が一瞬にして消えたのだ。
 おそらく、Aクラスのエスパーが何人か協力してこの事件を起こしたものと本部では見ている。
 そこで、エスパー・ソルジャー・ジュンを探し出して、私の所に連れてきてほしいのだ。」
 長官はミディアにそう言うと通信を切った。
 『なぜ、ジュンでなければいけないの。 もうこの世界にはいないのよ。』
 ミディアはつぶやいた。
 
 「長官。 このような事件をでっち上げてもらって。」
 「いや、極一部にだけの限定だからできたのだよ。 コンピュータ・ネットワークの盲点とでも言うことかな。」
 確かに、この情報は、ミディアのいる地域にのみ限定され、ビッグ・エスによる情報の隠蔽もあった。
 「それより、君は死んだことになっているんじゃないのかい。」
 「ええ。彼女の目の前で真っ黒なすすになって死んでいます。」
 「しかし、ここにいる。」
 「そのことについてはあとで詳しく話します。 科学班と捜査課、心理分析班がそろそろ到着するころです。
 我々もミディアの研究室に行くとしましょう。」

 「メディチ。 何処にいるの。 誰もいないの。」
 ミディアはパニックに落ちていた。 長官から連絡を受けた後、ミディアは、ビッグ・エスに事件の様子を聞き、
 さらに、ジュン居場所を尋ねた。
 『ミディアさん。 私よりもあなたの方が側にいたのだから、よく知っているはずです。』
 ビッグ・エスはそれだけ言うと沈黙してしまったのである。
 「そうよね。ジュンは死んだのよ。」
 そのとき、音もなく研究室のドアが開き、一人の研究員が入ってきた。
 「ミディア。 すべては終わったのです。」
そういうと、ミディアの肩をたたいた。
 肩をたたかれ、どきっとして振り向いたミディアは、そこにいた研究員を見て驚いた。
 「メ・メディチ・・・。 いや、あなたは・・・。 そんなことはない。 なぜ・・・。 生きているはずはない。
 ジュンが生きていてたまるものですか。」
 「驚いたようだね。 確かに自分は死んだはずだよな。 あなたの作ったクローンで。」
 其処に立っていたのはジュンだった。
 ミディアは、両手で顔を覆い、がっくりと膝をついた。 しかし、指の間から覗く目は、怪しく光っていた。
 「生きているはずなどない。 これは幻覚なのよ。 ジュンを探さなければいけないと思っているから。 そう。
 ここにいるのは、ジュンではなくて、メディチよ。 ジュンの居所を探してちょうだい。」
 ジュンはとりあえずビッグ・エスにこう言った。
 「ビッグ・エス。 認識コード・Aー72エスパーソルジャージュン。 確認したら、コード・オメガを解除し、
 すべての質問に答えよ。」
 『私はビッグ・エス。エスパー・ソルジャー・ジュンを確認。 コード・オメガを解除しました。』
 「メディチ。 あなたは何をしたの。 このコード・オメガってなに。」
 「先ほども言ったように、私はジュン。 メディチは、私が持っている変身能力の一人です。 あなたに接近するために
 変身していたのです。 コード・オメガとは、ビッグ・エスが、あなたの指令通り動くように見せかけるというプログラムです。
 今起きている事件なんてありません。 でっちあげです。」
 「そ・そんな。 あの私の前で戦ってすすになったジュンやクローンは。」
 「確かにあなたの作ったクローンは生きていて、ジュンと戦いましたが、あのクローンにはある一定の時間がくると
 自己崩壊するように仕組んでいたのです。 さらに、ESP能力も持っていません。 あの戦いはすべて、自分が作った
 幻覚です。 あなたに本当に起こったように見せるための。」
 「そうだったの。」
「はい。」
 ミディアは、培養ポッドを背にしてたった。
 そのとき捜査課の一団と長官が入ってきた。
 「残念だよ。 君みたいな優秀な科学者を逮捕しなければならないとは。」
 長官はそう言うとジュンの横に立った。
 「ミディア。 法令第109条人間のクローンの製造及び、その蘇生の禁止事項違反で逮捕する。 これからの発言は、
 すべて記録され、法廷での証拠として提出するからわきまえて発言するよう注意すること。」
 捜査員の手でミディアは電磁手錠をかけられた。
 「じゃあ。 ジュンはどうなるの。 ここでの研究は、メディチという名のジュンも手伝っていたのよ。」
 「そのことならば、自分がしたのは、医療用のクローン細胞の研究です。 この研究は、認められています。 で、
 あのクローンについては、時限装置の組み込みと、能力の低下のみを行った以外手は触れていません。 また、
 そのときの様子は、すべて記録されており、先ほど判決がおりています。 研究は、医療研究と認められ、
 クローンについては、蘇生を防ぎ、それにより起こる事件への関与性がないようにするための処置として、この長官元で
 二年の監視付きという判決となった。」
 「そうなの。」
 ミディアは、肩を落とし、部屋から出かかって振り向いてジュンに聞いた。
 「ジュン。 あなたは寂しくないの。 永遠の命を持ち、生き続けることに。」
 「自分は、寂しくないと言ったら嘘になるけれど、今を楽しく過ごせればいいと思っているよ。」
 「ふふ。 年寄り臭い発言ね。 さあ、連れて行って。」
 ミディアは、胸を張ると捜査員とともに出て行った。

 研究室は、捜査課、科学班の手で徹底的に調べ上げられ、ミディアは、心理班の手で心理的に以上のないことが確認された。

 
JUN OF PASS AWAY DREEM  後編3了
2004.02.14(土)