エスパー・ソルジャー・ジュン

JUN OF PASS AWAY DREAM 前編  JUN OF PASS AWAY DREAM 後編1

JUN OF PASS AWAY DREAM 後編2  JUN OF PASS AWAY DREAM 後編3



                                                                                               VOL、3
                                                                       COL,23 銀河歴584年

 
                                            JUN OF PASS AWAY DREAM 中編


 ボーイング7792タイプ。 地球と惑星ドミニクを結ぶ定期航宙機が地球オリオール国際宇宙港を定時に発進した。
 「機体各部異常なし。 航路上問題点なし。 計器オール・グリーン。 発進します。」
 「こちら管制塔。 進路オール・グリーン。 発進台に向かえ。」
 「ドミニク定期102便。 発進します。」
 短い管制塔とのやりとりがあり、102便は何事もなく発進していった。
 「大気圏離脱。 ブースター切り離し成功。 各部異常なし。 リープ・ポイントまで慣性飛行。」
 「リープ・エンジン点火。 これより、リープにはいる。」
 「リープ開始します。」
 「リープ開けまでの時間は。」
 「およそ一時間。」
 「オートパイロットに切り替え、我々は休憩だ。 しかしすごい世の中に成ったものだ。人類の夢だったワープができ、惑星間の距離が縮まった。 だが、それからわずかの間に今度は、リープだ。 ワープよりも簡単にしかも重力酔いみたいなものも起こさない。 人体に安全な航法ができるとは思わなかった。」
 ベテランのパイロットは、若いサブパイロットにいった。
 その時だった。 突然、レッド・アラームがコクピットに鳴り響いた。
 「どうした。」
 「オート・パイロット、作動停止。 航法装置に異常発生。 手動にきりかえ・・・?・・・。 手動に切り替わりません。」
 「何だと。 生命維持装置はどうなっている。」
 「何とか生きています。」
 「メーデーは打ったのか。 エンジンの再点火は・・・」
 「メーデーは自動で打ち続けています。 エンジンは点火しません。 リープ空間に閉じ込められました。 乗客にはどう説明しますか。」
 しばらく考え込んだ機長は、おもむろにこう言った。
 「客室に催眠ガスを流す。 少しでも生き抜くためだ。 けして乗客に気づかれるな。 救援を待つ間だけの特別処置だ。 この方法は、航宙法で定めてある。」
 ボーイング7792タイプ。 102便はリープ空間という特殊な空間に閉じ込められてしまった。

 「第二段階もスムーズに進んでいるようね。 今度はいきなり通常空間に飛び出さなかったけれど。 ジュンの居所は分かったの。」
 「ジュンは現在惑星コロンビアで農夫として働いています。」
 「ありがとう。私がいない間も作戦は続行しておいて。」
 「わかりました。 作戦は続行します。」

 「よいしょっと。 日も暮れてきた事だし、このくらいにしておくか。 さて、今日は何を食べるかな。 確か昨日の残りがあったな。」
 ジュンは、日暮れの畑を後にして家路についた。

 食後のコーヒーを飲みながら、星間ニュースを見ていたジュンの家にノッカーの音が響いた。
 「珍しいな。 こんなへき地に客ですか。 なんだ・・・この感覚は・・・軍のエスパー・シールドの新型を二重にはっているのか。 この客は軍関係者か。」
 ジュンは、一人つぶやくとドアを開けた。
 「こんな遅くにどうしました。」
 「こんな時間に失礼します。  わたしは、ミディアといいます。 ある人を捜しています。」
 「立ち話もなんですから、部屋の中に。 軍の人ですね。」
 ジュンは、ミディアを部屋の中に入れた。
 「とりあえず、話は後にして、コーヒーでも飲みませんか。 おいしいですよ。」
 「ではそうさせてもらうわ。」
 ジュンはマグカップにたっぷりのコーヒーを入れるとミディアの前に置いた。
 「さて、お捜しの人は私かな。 こんな田舎の惑星の僕のところまでご苦労様です。 ところで軍・・・連邦かな、のお嬢さんがどのようなご用ですか。」
 「全てお見通しなの。 確かに私は連邦からあなたを訪ねてきたの。 それより、このコーヒーおいしいわね。 改めて、私は連邦ESP対策本部、ESP事件調査部部長のミディア・フレンチーノ大尉です。 あなたが、ソルジャー・ジュンで間違いないわね。」
 「連邦の調査部でしたか。 ミディア大尉。 確かに私が、あなたの探していたジュンです。
 調査部の人が私のところへ来たということは何か事件ですか。」
 「はい。 三日前のピンポイント墜落事件は御存知ですよね。」
 「確かピンポイントに民間航宙機が墜落したという。」
 「その事件なんですけれど、裏でエスパーが関係しているという情報があって、その協力の依頼に来ました。」
 「そうですか。 でも私でなくてもソルジャー隊の人間を使えば・・・。」
 「最初はそうしようと思いました。 しかし、状況が変わったのです。 今から6時間前に地球を飛び立った民間機がリープ空間に閉じこめられてしまったの、状況がピンポイント事件と同じなの。 手伝っていただけるかしら。」
 「リープ空間ですか。 私も興味のある空間ですが、私でなくてもよかったのではないですか。」
 「リープ空間に対応できるエスパーが、簡単に見つかると思って。 確かに、ソルジャー隊にはいろいろな能力を持った隊員がいます、ですがあなたのように全てにおいて能力が高いAクラスのエスパーはいないのです。 今こうしているときでも、乗客たちは救いを求めています。」
 「仕方ない。 そこまで言われてしまうと、断れないな。 それで、コースと乗客数、生命維持装置の残り時間、わかっていること全てを提示してくれないか。」
 「やっていただけるのね。 コースは、799。 地球発ドミニク行きの定期便。 ボーイング7792タイプ、乗客数は、800名、クルーは12名。 生命維持装置は何かあった場合、90時間のバックアップ能力があるわ。 地球からおよそ一時間たったところでリープ空間に突入。 その後すぐにエマージェンシーコードが発信されています。」
 ミディア大尉は、持ち込んでいた小型ノートにデーターを映し出しながらジュンに説明していった。
 「了解した。 久しぶりに仕事をしますか。 ところで長官からは何か私に伝言は無かったですか。
 私の居所は長官しか知らないものだから。」
 「長官からの私信は無かったです。 あなたの居所だけを教えていただきました。」
 「そうですか。 私は、先に行っています。 あなたには悪いのだけれど、戸締まりをお願いします。」
 ジュンはそう言うとテレポートしてその場から消えた。
 「はいはい、戸締まりぐらいいたしましょう。 あなたの最後の家ですものね。」
 ミディア大尉は、とりあえず今晩はこのまま泊まることにして、明日出ていくことにした。

 ジュンは、能力の最大値で、テレポートを続け、地球のある太陽系の外縁部に姿を現していた。
 「あの大尉は何をねらっているのだろう。 長官からの命令書もなく私のところに来たのが引っかかるな。 ここまで銀河標準時間で三時間か、予定より早くついたようだ。 とりあえず定期便でも探すとしますか。」
 ジュンは、リープ空間から発信されているエマージェンシーコードをたどるように、リープ空間へ姿を消した。 エマージェンシーコードをたどること1時間。 ジュンはやっと定期便を見つけた。
 「この機長はしっかりした人のようだ。 乗客を救うために、緊急睡眠を行うとは。 故障の原因は、外部からのアクセスによるものだな。 さてと、このまま寝ていてもらうとして、リープ空間から脱出しないことには、ショウガねえ、機体ごとテレポートしますか。」
 ジュンは、機体ごと通常空間にテレポートした。
 「このままでいいだろう。後は、連邦が何とかしてくれる。」

 「長官お久しぶりです。」
 「おい、脅かしっこ無しにしてくれよ。 まっ、元気そうだなジュン。 私のところに来たということは、何か事件かな。」
 「長官はご存じ無いのですか? 定期便がリープ空間に閉じこめられたという事件を。」
 「初耳だな。 ちょっと待っていてくれ、調べてみる。」
 この長官は、今までの長官たちと違って、机の上に山のような書類はなく、代わりにデータ・ディスクがうずたかく積まれていた。 その山の中に端末が埋もれているらしく、いくつかの山を崩して、端末にコードを打ち込んだ。
 「そんな事件は、ここに届いていないな。 今あるのは、この銀河のはずれで、エマージェンシーを放っている定期便に救助隊が発進したことぐらいだ。」
 「その定期便がリープ空間に閉じこめられ、今私がそこに持ってきたものです。」
 「本当なのか。 それならば、もう少し前のデータにエマージェンシーが記録されていなければならないのだが。」
 「やはり、何者かの手によって消されているようですね。」
 「ところで、コーヒーと紅茶どっちだったかな。」
 「私は、コーヒーですが。」
 「おい、コーヒーをきちんと入れたのを二つサーバーで持ってきてくれ。 客がいるのでな。 それで、この事件を知ったのは、どういう。」
 「私のところに、ミディア大尉という、調査部の部長が来ましてね。」
 「ミディア大尉だな。」
 長官は、再び端末に向かった。 
 「長官。 失礼します。 コーヒーをお持ちしました。」
 「ありがとう。 そこの客に出してあげてくれないか。」
 長官は、顔も上げずに指示した。
 「はい。 あらっ。お久しぶり、元気でいました。」
 「なんとかね。 それより一緒に飲みましょう。 長官は今忙しそうだから。」
 「そうね。 長官いいですよね。」
 「かまわんよ。 ジュンがよければ先に飲んでいてくれ。 くそっ。 又パスワードかよ。 調査部の奴らいったいいくつのパスをかけているんだ。」
 長官は、いらいらしながら悲鳴を上げていた。


JUN OF PASS AWAY DREEM  中編了
2003.02.23(日)

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