エスパー・ソルジャー・ジュン

JUN OF PASS AWAY DREAM 前編  JUN OF PASS AWAY DREAM 中編  

JUN OF PASS AWAY DREAM 後編1  JUN OF PASS AWAY DREAM 後編3  

 


                                 
                                           VOL、3
                                     COL,23 銀河歴584年


                       JUN OF PASS AWAY DREAM 後編2


                                    


 「ここは、私個人の研究室よ。」
 「では、私が呼ばれたのは。」
 「あなたの書いたクローン研究とサイバネテクスの融合が、ここでは必要なの。 その研究のために必要なものはここにあるわ。」
 そう言うと、ミデイアはメディチを抱きしめた。 だが、その顔は怪しくゆがんでいた。
 「そこの培養液の中で浮かんでいるのが、私が作り上げたクローンよ。 あと20日もすればその容器から出せるようになるわ。」
 「すごい。私が作っていたクローンは、動物だったのに、ここには人間のクローンがいる。 すばらしい。 私の方こそ、進んで研究させていただきたい。
 これだけの設備ならサイバーとの融合システムの研究が進む。」
 二人は、互いの野望を胸に秘め、手を取り合った。
 「メディチ。 私は軍の仕事もあるからなかなかここにはこれないの。 あなたにはそこのクローンの成長記録をしっかりとってちょうだい。
 この部屋はあなたに任せます。 あなたは、ここで自由に研究を続けていいわよ。」
 「わかりました。 記録を採れば後は私の好きにクローンを作ってもいいわけですね。」
 「そういうことね。 じゃ、後は、自由にしていいわよ。」
 そういうと、ミディアは研究室を出て行った。
 しばらくクローンの培養ポッドを見つめていたメディチは、部屋の中を見回した。
「監視カメラなし、ESP検地装置なし、簡単な防犯装置のみか。 ずいぶんと不用心な部屋だな。 しかし、思っていた以上の成長だな。」
 メディチは、部屋に一つだけあるコントロールデスクに座ると今までの成長記録を読み始めた。
「すごい培養方法だ。 まともな研究ならば賞が幾つももらえるのだが。」

 翌日からこの部屋にメディチの研究に必要な材料が運び込まれた。 
「さてと、このくらい運び込めばいいかな。 クローン君にはかわいそうだが、ちょっと細工をさせてもらうよ。」
 培養ポッドに近づき、なにやら始めた。
「よし。 このまま成長させれば見た目はわからないだろう。」
 メディチはいったい何をしたのだろう。

 そして16日が過ぎた。
 クローンは、成長が進み、すっかり大人の体躯をしていた。 また、メディチはいくつかの腕や足を作り、別に培養したクローン神経細胞との接続を
 終え、コンピュータとリンクしていた。 彼の研究も順調であった。
「研究は順調のようね。」
 突然、16日間一度も姿を見せなかったミディアが声をかけたのだった。
「ミディアさん。 私の方は順調に進んでいますが、このクローンの方はどうするのですか。」
「記録を見せて。 ここまでうまく成長するとは、思わなかったわ。 これからはこのクローンを教育します。 この端末を接続します。」
そういうと、コントロールデスクの一端から太いケーブルを取り出すと、培養ポッドに接続した。 そして、いくつかのコマンドをキーボードから入力すると、
 メディチに向き直った。
「あと4日。 メディチ、これから彼はすごい勢いでいろんなことを覚えていきます。 私は、二日おきにしかここにこれないけれどしっかり記録はつけておいてね。」
 そう言うとミディアは部屋を出て行った。
「なるほど。 ビッグ・エスと直接リンクしたのか。 確かに賢い方法だ。」
 メディチは、しばらくそのクローンを見つめていた。

「ミディアさん。 すごいですよ。 このクローンの情報吸収能力はとてつもないですね。 すでに一般的な教養はすべて吸収しました。」
「メディチ。このクローンはまだまだすごくなるの。」
 ミディアは、メディチの報告を聞くとそう答えた。
「ところであなたの研究の方はどうなの。」
「私の方も順調に進んでいます。 この研究が進めば、事故や病気で失った体のほとんどを再生することができます。 あとは、発表用のレポートをまとめるだけです。」
「了解いたしました。 では、この部屋での研究はおしまいということでいいのね。」
「はい。」
 ミディアは、培養ポッドの中に浮かぶクローンをうっとりと見つつ言った。
「では今日付を持ってこの部屋から、第二研究部、第一生理学研究室へ移動してもらいます。 そこでレポートをまとめるといいわ。」
 ミディアの目に怪しく光るものがあった。
「ここでの研究で使用したものは、あとで研究室の方へ送ります。 ここでのことは秘密です。 守れますね。」
「はい。 ありがとうございました。 ここでの研究は、私にとって忘れられないものとなります。 では、第一生理学研究室へ移動します。」
 メディチは、ミディアと握手をすると部屋を出て行った。

 それから三日が過ぎた。
「培養ポッドから出て三日。どこか具合の悪いところはあるかしら。」
「いいえ。 すこぶるいい調子です。」
「明日から、あなたにはがんばってもらわなければならないの。 この部屋とも今日限りになるわ。」
 ミディアは、クローンが別室にはいるのを確認すると、ビッグ・エスを呼び出した。
「ビッグ・エス。 調べてちょうだい。 今現在、ソルジャー・ジュンは何処にいる。」
『現在、ジュンは以前と変わりなく農業に精を出しています。』
 ビッグ・エスは答えた。
「ビッグ・エス。 明日の朝六時にプラン7を実行に移します。 準備しておいてね。」
『解りました。 プランの実行を準備します。』
「ふふふ。 これでジュンも楽になることができるのよ。」

 そして翌日。
「ピック・エス、準備はいい。 プランを実行して。」
『実行します。 移送先は、ジュンの家から三十キロの地点。 実行開始。』
 ピック・エスの能力の限界に近い長距離の移送であった。 移送とは、実体を一度プログラムに分解し、通信波に乗せ、移送先で組み立て直すということである。
 ただし、実体化しなかったり、他のものと融合してしまったりという事故が続いたため、現在では使用を禁止されていた。
 
「麦の刈り入れもこの調子でいけば、あと二日ぐらいかな。 さて、夕飯の準備でもしますか。」
 ジュンは、夕焼けの中に青い一筋の流星を見上げ、農作業を終えた。

 


JUN OF PASS AWAY DREEM  後編2了
2004.01.25(日)