エスパー・ソルジャー・ジュン

  エスパーソルジャージュン  JUN OF PASS AWAY DREAM  


                                           VOL、1
                                      COL,3 銀河歴102年

 
                                       ユリカ編


 人類は地球を飛び出し宇宙の星々に植民を始めた。 各植民星は、それぞれ独立し、独立植民星となり、植民星を含む太陽系ごとに太陽系国家と呼ばれ、一つの自治国家エリアとした。
 時に銀河歴102年。

 太陽系国家アウター。その首都惑星アルバート。
 「ふー、全くこの星は暑いなぁ。」
 旅人が陽炎の立ち上る道をとぼとぼと重い荷物を背負って歩いている。
 「くそっ。長官のやつこの星は涼しいなんて言いやがつて・・・」
 その時、三機のコパー・ファイターが現れ、男めがけて機銃を撃ち始めた。 足下に砂煙が立ち上り、さらに足跡を消していく。
 「うっ。誰だ・・・。まさかあいつか?」
 旅人は、その場に荷物を捨てると、走り出した。 だが、コパー・ファイターの攻撃はひつように続く。 旅人は、足下をすくわれ、その場に転がった。 そこへ機銃の嵐が追いすがる。
 旅人は、一瞬早く岩陰に飛び込み、ほっと息をついたが、そこに銃弾が襲った。

 銀河歴となり、50年をすぎる頃から恒星間を結ぶ定期旅客船や、VIP用の客船を襲う海賊が現れるようになり、銀河パトロール通称MPがそれに対処するべく作られた。  いくつかの規模の小さな海賊は、MPによって壊滅されたのだが、大半はその包囲から抜け出し、互いに手を結び、銀河海賊通称GPを結成したのである。
 
 「正面12時の方向。座標M−01・P−OにUFO発見。」
 「GPか?確認急げ!」
 「正面より高エネルギー波感知。三秒で到達!」
 「総員対ショック」
 「直撃です。」
 「左エンジン沈黙。レドーム壊滅!本部と連絡とれません。」
 「ちっ!相連なれてやがる。」
 豪華客船アイリーンは、残った右側のエンジンも被弾し、その場に漂い始めた。
 「船長。生命維持装置を残してすべて沈黙。」
 「なんてやつらだ。客を中央のホールに集合させ、クルーは、全てハンドブラスターを携帯。 敵襲に備えよ。 何より、客の人名を最優先とする。」
 ブリッジ要員を数名残して、各クルーは、指示の元に散っていった。
 「来るぞ。」
 船長の声と同時に船体が軽く揺れ、戦闘用スーツを着た黒ずくめのものたちが乗り込んできた。
 「我々は、君たちの命は取らない。すでに君たちの武器は、使えないことを最初に宣言する。 我々は、金になるものだけをいただければ後はいらない。 我々は、ダーク・スカルだ。」
 黒ずくめのものの中で何も持っていないのが、言った。
 「全て回収しろ。抵抗は無駄だ。 2人、俺と来い。」
 そういうと、首領らしいものと、2人の部下が、ブリッジに入っていった。
 「こんにちは船長。 いい船ですな。 おっと、腰のブラスターは使えませんよ。 先ほどエネルギーを抜かせていただきました。 ちょっとの間みなさまには、眠っていただきたいと思っていますので、我々は、ダーク・スカル。 覚えていられれば幸いです。」 そう言い残すと、姿を消した。
 翌日、アイリーンは、定期運行していた、同型船アイリッシュによって発見された。

 「最近、第二星域で17の海賊行為があった。 そのうち10個が同一のものの手によって起きている。」
 「それで私にその海賊を捕まえろと・・・」
 「まっ、そういうことだ。 やってくれるね。」
 「しょうがないですよ。長官に頼まれては・・・」
 「ありがとう。ジュン。」
 2人は互いに握手した。
 「彼らのベースは、おそらく・・・」
 「長官。解っています。 今からだと、船に間に合うかな。 では・・・」
 そういうと、ジュンは、姿を消した。
 「エスパーソルジャーか。彼は、いくつになったんだ。」
 長官は、ふと、ジュンの歳に考えが行った。

 「長官のやつ、ひでぇなあ。 二重太陽って言うことを忘れていやがる。」
 アルバート・エアポートにジュンは立っていた。 入国検査も済み堂々とこのアルバートに潜入したのである。
 「さて、どこに行くかな。・・・?・・・早速、監視し始めたみたいだな。 入国検査とは別にもうけるとは。 何かあるな。」
 ジュンは、自分をスキャンした細いESP波を探知されないようにしながら、辿っていくことにした。 
 「ちっ、感づいたか。 かなりの能力者だな。 ん?右のビル。」
 ジュンは、即座にテレポートした。
 「確かにここにいた。 ここから探っていたのか。」
 ジュンは辺りを見回すと、
 「見っけ。 正面。 高いビルの向こう側。」
 ジュンは、テレポートした。
  しかし、
 「隣のビルの空き部屋に移動するつもりか。」
 ジュンはテレポートの途中でコースを変えた。 ジュンがテレポートアウトしたとき、そこにいたのは、まだ幼さの残る少女だった。
 「君が・・・」
 「そう。 私があなたをここに呼んだの」
 ESPバリアーを張って、ジュンに探られないようにしつつ答えた。
 「・・・ジュン。 あなたの名前ね。」
 その時、最初にいたビルが大音響とともに崩れた。
 「ふふっ。私を見つけてよかったわ。 あのまま、彼処にいたら、ハンターに殺されていたのよ。 ふふっ。」
 「エスパー狩りか。」
 「そう。 でも大丈夫よ。 私といれば。」
 ジュンは何気なく思考にバリアを張った。
 「ありがとう。 それより、君の名前は」
 「わたしは、ユリカ。 ジュンてすごいのね。」
 「何がだい。」
 「実はわたし、ランダムに波を放射していたのに、間違いなくここにきたんですもの。」 「それはどうも。 ユリカ、エスパー狩りをしているといったね。 君は大丈夫なの。」 「わたしは、このバリアのおかげで生き延びれているの。」
 屈託のない笑顔に、ジュンはほほえんだ。
 「で、エスパー狩りをしているのは、誰か知っているかな。」
 「もちろんよ。 だってそこに連れて行くか、死体を持っていけば懸賞金がでるの。 でも、そこにいるのが誰かは誰も知らないの、だって懸賞金ほしさに行った人たちは、そこから帰ってこないんですもの。」
 「そうなのか。」
 ジュンは、思考バリアとESPバリアの両方を張っているユリカの表情を読むしかなかった。 だが、そこには何もなく、ただ笑顔だけがあった。
 「でね。 その人はね。 この星の皇帝トレール・アルバートよ。」
 「トレール・アルバート。 あいつか。 一寸待ってくれ。 今誰も知らないと言っていたよね。 何故皇帝なんだい。」
 「だって、皇帝タワーに連れて行くんですもの。 其処にいるのは皇帝だけでしょう。」 ジュンは、しばし考え込んだ。
 「なるほど。」 

 トレール・アルバート。 この惑星の皇帝である。 先代の皇帝ヘンリー・アルバートは、この星を独立させると息子であるトレールにすべてを渡し、自分は潔く引き下がった。 その後この惑星は、豊富な資源のおかげと、惑星間交通の拠点の一つとして栄えていた。 皇帝アルバートは、皇帝とはいえ、自ら何かあったときに出向き、人民とともに語らい、悪いところがあればなおし、ほかの惑星でよいと思ったものは、審議会に提出し取り入れていった。 連邦も恩恵を受けていた。

 その夜。 ジュンは、ユリカが寝付いたのを確かめると、表にでた。
 「このエスパー狩りと、海賊行為がつながるのか。」
 ジュンは、空を見上げると、 
 「確かめるしかないな。」
 ジュンはテレポートした。
 だが、その行為を見つめる目があったことを知らない。

 皇帝タワー。 此処は、この星の中央部に位置し、全ての中枢が集まっているところであり、最も頑強な要塞でもあった。
 ジュンは、今このタワーのある中央広場にテレポートしていた。
 「さてと、まずは防犯装置だな。」
 ジュンにとってこの程度の防犯装置を眠らせるのは、訳のないことだった。 さらに続いて、エスパージャマーと呼ばれる装置も眠らせた。 警備の全てが静かに眠りについた。 「鬼が出るか、蛇が出るか。 当たって砕けてみるか?」
 ジュンの視界に闇夜より濃い漆黒の航宙艦が飛び込んできた。
 「ビンゴ。 皇帝の専用スポットにあんなものがあっちゃ嘘はつけないな。 乗り込んでみますか。」
 再びテレポートしたジュンは、その漆黒の船に現れた。
 「なるほどね。 黒くした上に光学迷彩。 さらには、エスパージャマー。 至れり尽くせりの装備ですか。 貨物室はと・・・」
 船の中を用心しながら、ジュンは貨物室へと近づいていった。 やがて数人の声が聞こえてくる。
 「たいしたものだ。 この船さえあれば連邦も怖くねぇ。」
 「まさに海賊様々ってか。 しかも皇帝がその親分とは誰も思わないものな。」
 「しかもよ。 エスパー狩りと称して連れてきたエスパーを味方にしちまうなんてな。 さすがとしか言いようがないよ。」
 「その通りだな。 おかげで仕事が楽になったんだからな。」
 ジュンは、物陰からその声を録音すると、その場を立ち去った。
 「エスパー狩りはダミーって訳かい。 海賊行為の裏はとれたな。 あとは、親玉の皇帝だけだ。」
 ジュンは、テレポートすると皇帝の間に姿を現した。
 「・・・?・・・!!しまった。 罠だったか。」
 姿を現したジュンを囲むようにして、数十名の警備兵と洗脳されたエスパーが、対エスパー装備で囲んでいた。
 「よくきたね。 待っていましたよ。 エスパーソルジャー・ジュン。 ジュンでいいかな。」
 囲みを分けるように皇帝トレール・アルバートが姿を現した。
 「初めてお目にかかる。 私が、皇帝トレール・アルバートだ。 ジュン、君を囲んでいる兵士すべてにコントローラーを装備させている、いくら君が宇宙一とはいえこの包囲網から逃れるすべはない。 私の合図で、エスパーたちと、兵士の両方が一斉に君に襲いかかるが、どうするね。 おとなしく私についてきてもらおうかな。」
 マントを翻すと、アルバートは一つの個室に入った。
 「この様なところまできていただき感謝している。 まっ、座りたまえ。 何か飲むかね。 今なら地球産の赤ワインのいいのがあるのだが。」
 「地球産のワインか。 いいな。 それよりもなぜ私のことを知っている。」
 「このワインを飲みながらではどうかな。」
 アルバートは、ワイングラスに自ら注ぎジュンに差し出した。
 「いいワインだ。」 
 「君のことはよく知っているよ。 エスパーソルジャー・ジュンとしてね。 ここに来ることも知っていた。 何せ、私は全能なる皇帝なのだから。」
 そういうと二杯目のワインを一気にあおった。
 「海賊行為も貴様がやったのか。」
 「もちろん。 この世にいらないものをいっぱい積んでいるものは、美しくないからな。 そんないらないものを私は集めているのだよ。 それよりもお代わりはいいのかね。」
 『こいつ、誰かに操られている。 そいつはどこにいる。 まずは、この部屋からでないことには・・・』
 ジュンは、二杯目のワインを飲みながら、コントローラーの位置を確認していた。
 そして、一つずつ、音を立てないように壊していった。
 「皇帝。しばらく眠っていてもらいたい。」
 ジュンは、ショツクウェーブを与えた。 その反動で皇帝アルバートは床に倒れた。
 だが次の瞬間。 ジュンの右腕が消えた。
 「何!」
 ジュンは、再生を始めていた。 細かいビームがジュンの周りに集中し始めた。 
 「このままでは、やられる。 再生中は、動けないことを知っているものがいるのか。 とにかく脱出だ。」
 ジュンは、再生途中の腕を庇いつつ廊下に転がりでた。 
 「しまった。」
 無防備に転がりでたジュンは、警備兵のことを忘れていたのだった。 一瞬身構える利が遅くなったジュンだったが、
 「誰もいない。」
 廊下はしーんと静まりかえっていた。
 「そうだ。皇帝は?」
 しかも振り返った部屋には転がっていたはずの皇帝の姿はなかった。
 「このまま、こうしてもいられないな。」
 ジュンは、再生の終わった腕を確認すると、サイコバリアーを張って警戒した。

 この時、このアルバートの星域に銀河第二惑星が長いこと閉じこめられていた空間から姿を現し始めていたことを誰も気付かないでいた。

 「アルバートが親玉ではないとすると、いったい誰が親玉なんだ。 ・・・。 まさか・・・。 そんなことはない・・・なにっ!」
 突然、高純度のエネルギー・ボールがジュンを襲った。
 「ついに親玉の登場か。」
 ジュンは、バリアーの範囲を小さくし、エネルギー・ボールの直撃に耐えていた。
 「さすがは、エスパー・ソルジャーだ。 このくらいの攻撃で死んでもらっても困るのだが。」
 爆光の中からマントを翻しつつ、アルバートが現れた。
 「いい加減に皇帝のまねはよすんだな。 すべては、貴様がしくんだものだ。 この僕を誘い出すためだけに。 そうだよなユリカ。」
 「御名答。 流石はジュンだわ。 それよりもまわりを見てごらんなさいよ。」
 その言葉にジュンは、はっとして辺りを見回した。 今まであった爆光は消え、あたりは窓のない壁だけの部屋だった。
 「いつの間に。」
 ジュンは、自分よりも強いエスパーに始めてであった。
 「どうかしらそのお部屋は。 壁全体を対エスパー・コントローラーで二重に覆ってあるその特別室の御気分はいかがかしら。 さらに言っておくけど、扉も窓もないのよ。」 「何だと。 ・・・ちっ、確かにブロックされている。 一つだけ聞きたい。」
 「いいわよ。 最後の言葉として聞いてあげる。」
 「本物の皇帝はどうした。」
 「いやだわ。 あなたの後ろにいるじゃない。 一緒に死ぬのよ。」
 そう言うとユリカの声がしなくなった。
 「まだ生きている。 何とか脱出しなくては・・・ん??」
 そのとき、惑星全体が大きく揺れた。
 「惑星規模の地震。 それより何か手はないのか。」
 ジュンは、あらゆる能力を試してみたのだが、二重にブロックされているその部屋から出ることは難しかった。
 「何か手はある。 まだ何とかなるはずだ。 落ち着いて考えるんだ。 まずこの部屋は二重にブロックされている。 出入り口はない。 ここに送り込まれたときは、コントローラーを一度切っていたはずだ。 待てよ。 皇帝が生きていると言うことは、どこからか空気が送り込まれていると言うことだ。 だが、エリカのことだ、そこには強力なコントローラーを仕掛けていると思って間違いない。 そうだ、明かりだ。 この表面の壁は発行パネルになっている。 その継ぎ目があるはずだ。 それと、パネルとコントローラーに電源を供給しているラインがあるはずだ。 そこを見つければ何とかなるかもしれない。 かえって能力を使わずに簡単に破壊できるかもしれない。」
 ジュンは、部屋の中を見回した。 皇帝の倒れているそばに、愛用のチタン合金の杖があった。
 それを拾い上げると、発行パネルの一部に思いっきり叩きつけた。
 発光パネルは丈夫だったが、何回も同じところを打ち続けていたおかげで、亀裂が入った。
 「もう一息だ。 しかし、能力を使わないと言うのも大変だったんだな。 ・・・ん??・・・まただ。 何が起きているんだ。」
 ジュンはまだ知らなかった。 あの銀河第二惑星が、近づいているのを。

 銀河第二惑星。 銀河歴79年。 Dr.キリュウの手によって超科学惑星が完成した。 外観は、地球型の惑星で移住も可能だったのである。 だが、その地下数10キロメートルには、各種メカニズムによって、惑星を維持していた。 そのメインコアであるコンピュータが、ある時意志を持ち始め、惑星に移住していた数万の人類を死に至らしめ、自らを万能の紙と称して、移動を始めたのだった。 しかも、近づくものは、破壊し、自らの一部として取り入れ、あるいはエネルギーとして取り込んでいった。 キリュウは、メインコアを破壊すべくソルジャー隊とともに近づいたが、失敗し宇宙の塵となってしまった。 ジュンは、仲間のソルジャーとともに、惑星外縁部にエネルギー吸収ボールを打ち込み動きを止めると、超空間へ葬ったのである。
 その銀河第二惑星が今また姿を現したのである。

 バシッと言う音とともに壁が砕け散った。 その中に手を突っ込み、二本のケーブルを引きずり出した。
 「これで内側の壁が死んだな。 もう一つの壁は、このケーブルをショートさせてと。」 ジュンは、手にした二本のケーブルの先を近づけた。 ケーブルからほとばしる光と焦げるにおいが部屋を充満したとき、二枚目の壁が崩れ、大きな穴となった。
 「皇帝が気を失っていて助かった。 こんな派手になるとは思わないからな。」
 ジュンが、皇帝を抱えて、部屋から出ようとしたとき、大きな揺れが襲った。
 「何だいったい。 何が起こっているんだこの惑星に。」
 ジュンは踏ん張って揺れをこらえると、手近な船を探した。 あの海賊船は先ほどからの強い地震による地割れに飲み込まれていた。
 「あの船しかないな。 行くか。」
 ジュンは、皇帝を抱えたままテレポートした。
 皇帝専用のクルーザー・ハイアットに二人は出現した。
 「とりあえず近くの基地は。」
 コンピュータに素早く発信シークエンスを打ち込むと、クルーザーを発進させた。

 「何が起きているのよ。」 
 ユリカもなにが起きているのかわからなかった。
 「皇帝。 ハイアットが発進いたしました。」
 ユリカは皇帝の姿を借りていたのである。
 「なに、ハイアットが発進しただと。 誰が乗っている。」
 「今しばらく。」
 ユリカはいらついた。
 「わかりません。 こちらの問いかけに答えません。」
 「なら撃ち落とせ。 早くするんだ。」
 そのときさらに巨大な揺れがおそった。
 近くの高い建物が崩れ始めた。
 「どうなっているのか。」
 「わかりません。 惑星規模の地震だとしか。」
 「皇帝、対空砲及び惑星衛星砲とのラインが先ほどの地震で切断されたようです。」
 「なんだと。」
 「皇帝、巨大な物体が、・・・惑星クラスの物体がこちらに進行中です。 おそらく、その影響が先ほどからの地震かと思います。」
 「スクリーンに出せるか。」
 「はっ、最大望遠ですがだせます。」
 スクリーンには、惑星を離れていくハイアットと、迫ってくる巨大な惑星が並んで映し出された。
 「銀河第二惑星? 破壊されたと思っていたが。」
    
 「第二惑星の向こう側。 あそこまで行ければ連絡が付く。」
 ジュンは船を第二惑星の向こう側にテレポートさせた。
 そこで、緊急事態発生のSOSコードを発信し、応答を待った。
 その間に、遠ざかりつつある銀河第二惑星のアルバート到着時間を割り出していた。
 『トウタツマデ、オヨソ5ジカン20プンデス。 タダシ、ワクセイガゲンザイノママシンコウシタバアイノヨソウトウタツジカンナノデ、ソノツドノヘンカニヨッテハ、ハヤマルバアイモアリマス。』
 コンピュータの無機質な答えが返ってきた。
 「後5時間か。 アルバートの人々の脱出には時間がなさ過ぎる。 何とかしなくては・・・」
 ジュンが考え込んだそのとき、コンピュータが通信をキャッチしたとの報告とともに、モニターに映像を表示した。
 「こちらは、地球連邦所属のギャラクシー・ワン。 そちらの緊急通報をキャッチした。現在の状況を知らせよ。」
 「やったな。 こちらは、アルバート所属のハイアットです。 私は、ジュンです。 こちらの船には、皇帝アルバートが昏睡状態で乗っています。 医療班の転送をお願いします。」
 「ジュン? ソルジャー・ジュンか。 私だ、デニー・ウイリアムだ。 銀河第二惑星を追ってここまできていたのだが。 まさかこんなところで貴様に会うとはな。 医療班は今転送した。 こちらに来ないか。ジュン。」
 「了解した。 久しぶりに君と話すのもいいだろう。 銀河第二惑星に対しての策を練りたい。」
 ジュンは艦橋にテレポートした。
 「やあしばらくだな、ジュン。」
 テレポートアウトしたジュンに、デニーが握手を求める。
 「久しぶりだな。デニー。」
 ジュンもにこやかに握手をする。 このデニー・ウイリアムは、宇宙海賊が出現し始めたとき、一緒に戦った仲間だった。 その後地球連邦にエスパーだけの部隊、エスパー・ソルジャーが発足し、ジュンはそこに入った。 デニーは、その後も連邦の高速戦闘艦に乗り組み、艦長となった。
 「ところでデニー。 この艦にエネルギー吸収ボールの作れるものはいるのか? それと惑星一つをテレポートしたい。」
 「うーむ。 惑星テレポートは、まだやったことがないが、何人かできそうなのはいる。 エネルギー吸収ボールは、14・5人といったところかな。」
 「そうか。 なんとかなるな。」
 デニーは、作戦指揮官と、二人のチーフを呼んだ。
 「これより、この艦は、ジュンの指揮下にはいる。 作戦指揮官の大和だ。 それと、ソルジャー隊のデビットとフランクだ。 こちらは、あのエスパーソルジャー・ジュンだ。」
 「お会いできて光栄です。 ソルジャージュン。」
 大和が気軽に声をかけてくる。
 ほかの二人は、見た目に若いその人が、ジュンだと言うことを怪しんでいたが、デニー艦長の態度によって、それが誤解で、本物であるとわかった。
 「それでは、これより作戦を伝える。 各員はこの内容に沿って行動してほしい。 では、今、目の前にある銀河第二惑星は、あと数時間でアルバートを飲み込む。 今のままでは、惑星に残された人々は脱出できない。 そこで、一度アルバートを銀河第二惑星の裏側にテレポートさせる。 そして、銀河第二惑星自体をエネルギー吸収ボールで覆い尽くし、その中に封じ込める。 後は、ブラックホールクラスの圧をかけてやればいい。」
 「しかし、惑星のテレポートなんてできるのですか。」
 「大和くんだったな。できると思ってやってほしい。 できなければ、アルバートにいる人々が一瞬にして飲み込まれる。」
 「両方を我が隊でだけでやるんですか。」
 「それしか時間がないんだ。」
 ジュンは、さらに詳しく計画をはなした。 その間にも時間だけがむなしく過ぎていく。
 「ところでジュン。 君はどうするのだ。」
 「自分は、あの星にいる悪党を捕まえなければならない。 これが本来の任務だからな。 それが終わり次第君たちと合流する。 相手は、自分と同等のエスパーだ。 もしかしたら負けるかもしれない。」
 「君ほどのエスパーでも、そう思う相手なのかい。 必ず戻ってきてくれよ。」
 「ああ。 それでは作戦を開始する。 おっと忘れていた、皇帝は何も知らない。 操られていたんだ。 そのことだけは伝えておいてくれ。」
 「皇帝の方は、こちらで責任を持って保護する。」
 「開始2分前からのカウントダウンでいいかな。 その間に各員に通達してほしい。 では成功を。」
 そういうと、ジュンはテレポートしていった。
 「各員に告げる、これはソルジャー隊のメンツにかけてもやり抜かねばならない。 できなかったら、全宇宙の笑いものになる覚悟で挑め。」
 
 アルバートでは、人々が航宙艦の発射場に詰めかけていた。 人々の肉眼でも銀河第二惑星がはっきりとわかる大きさに写ったのだ。 どの艦もパニックになった人々でいっぱいである。 また、発進しようとしても、扉が閉められずにいるものや、滑走路に大勢の人がいるため、飛び立てず立ち往生している艦もあった。 そんな中にジュンがテレポートした。
 「すごいことになっている。 助けてやりたいが、今は・・・ユリカは何処にいる。」
 ジュンが、残留思念を探っているとき、ソルジャー隊の一派が到着し、人々の整理に乗り出した。 パニックになっている人々を蹴散らすように、武器を抱えた一団が一つの艦を占拠しようとしていてた。 それは、ユリカに裏切られ、皇帝タワーに残された兵士たちであった。 だが、ソルジャー隊の力の前には、抵抗もできずに鎮圧された。
 「ソルジャー隊の諸君。 人々が艦に乗ったら、発進せず、そのまま、星ごとテレポートしてほしい。 各艦に一人または二人の隊員で、人々を眠らせ、一気に運ぶんだ。」
 ジュンは隊員たちに指令を送った。 ややあって、各隊員から準備ができたとの知らせが届く。
 「3秒後に一気に力を出せ。」
 ジュンはそう言うと、切れ切れになっているユリカの残留思念を追った。
 『何処に向かっている。』
 ジュンは、銀河第二惑星の力によって、異常な振動を起こし、建物が崩壊しつつある町の中にいた。
 「チッ、消えそうなほど細いぞ。 この星にはいないのか。」
 ジュンがテレポートしたのとほぼ同時に、アルバートもテレポートした。

 「銀河第二惑星が遠ざかっていく。 作戦は成功だ。」
 銀河第二惑星の向こう側にアルバートをテレポートさせた部隊は、その成功にほっとしていた。
 「第二班の方は準備が始まっているのか?」
 隊員たちは、遠ざかっていく銀河第二惑星を見上げながら、それぞれが成功することを祈った。

 銀河第二惑星の中心部にあるメインコア。 ここにユリカはいた。 メインコアの一部は、損傷していたが、自己修復機構で妖しく蠢くパイプやコードによって、新たなコアを形成していた。
 「ユリカ、やっと見つけたよ。」
 ジュンは、ユリカの前に現れた。
 「やはりあのくらいでは死なないのね。 でも、もうお終いよ。 ここがどこだかわかって。」
 「銀河第二惑星の制御室。 まさか。 ユリカ、君はこの惑星のコアと・・・」
 ユリカは、一つの計器板の前に立って、ジュンの方をみようともしないで言葉を続けた。 「すばらしいわ。 ジュンそう思わなくって。 この惑星さえあれば、銀河を私のものにすることができるのよ。 あなたも一緒にやりましょうよ。」
 「ユリカ。 自分にはそんなことはできない。 まして、この狂ってしまったこの惑星を利用しようとは思わない。 ・・・?!・・・ 何をした。」
 ジュンがしゃべり終えないうちに、あちこちからコードが飛んできて、ジュンの体を縛り付けた。
 「どうしても、一緒にいることはできないらしいわね。 ならばこの場で死んでちょうだい。 私は、銀河を支配するの。 海賊行為で地道にやっていくよりも、この惑星を使った方が簡単だものね。」
 「うぐっ」
 ジュンは体を締め付けるコードで気が遠くなりかけていた。 だが、
 「このくらいでやられるわけにはいかない。 エネルギー・ソード!」
 ジュンを縛っていたコードが、ジュンの創った光の剣で四散した。
 「ユリカ、貴様をここで倒さなければならないようだな。」
 「私も、あなたを生かしておくことはできないわね。」
 ユリカも、エネルギー・ソードを創った。
 二つの剣が交差するたび、あちこちの計器が吹き飛び、小さな火柱があがる。 だが、修復機構が、壊れたところを瞬時に直していく。 その時だった、ものすごい力によって、惑星が停止した。 メイン・コアは、すさまじい勢いで、あちこちの回路をつなげ、力を蓄え、前進しようとしていた。
 「やったな。」
 「何をしたの。」
 「自分は何もしていないよ。 外にいる部隊が、やってくれたんだ。」
 ユリカはそれを聞くと、惑星の表面に躍り出た。
 「なんて言うことなの、星が消えていく。」
 「やっとわかったようだな。 この銀河第二惑星は、ここで沈むのさ。 この星とともに沈め!ユリカ!!」
 ジュンの怒りに満ちた剣が、ユリカの体をまっぷたつに引き裂いた。
 「私は、ユリカ。 きっとあなたの前に戻ってくるわ。 楽しみにしているのね。」
 そう言い残すと、ユリカの体は光の粒となり、宇宙空間に消えていった。
 「やったようだな。」
 ジュンは、メイン・コアに引き返すと、その中央部にあるコンピュータにエネルギー・ソードを最大級にして叩きつけた。 いやなうなり声にもにた音とともにコンピュータは砕け散った。
 「このままでも銀河第二惑星は崩壊する。 だけれど、第二のユリカが現れ、再生するかもしれない。」
 ジュンは、エネルギー吸収ボールを作ると、さらにそのボールを圧縮し始めた。
 「これで内部から、すべてのエネルギーを凝縮させ、表のボールで覆い尽くせば、小さいがブラックホールができるはずだ。」
 ジュンは、そのボールをコアの中心におくとテレポートした。

 「いいか、隊員の諸君、後少しで銀河第二惑星を包み込む。 タイミングを自分に合わせてくれ。」
 ジュンにすべての隊員の意識が流れ込んできた。 ジュンは最後の巨大なボールを、銀河第二惑星にたたき込んだ。

 銀河第二惑星は、小さな放電をしたかと思うと、宇宙空間から消えた。 後には、小さなブラックホールだけが残った。

 「ありがとう。 諸君らの協力によって、このあたりに起きていた海賊行為の撲滅と、銀河第二惑星の脅威は去った。 この事は長官に報告しておく。 ありがとう。」
 ジュンは艦橋で、そう隊員に伝えた。

 そして二日後。
 「ジュンお疲れ様。」
 「それより、皇帝はどうなります。」
 「皇帝は、操られていたことが判明し、無事に元の鞘に収まったよ。 惑星アルバートも元の軌道に乗った。 あちこちにかなりの被害が出ているようだが、それは連邦の方で処理することが先ほど決まった。 それより、一緒に食事でもしないか。 つかれただろう。 いい店があるんだけれど。」
 「長官のいい店って言ってもなぁ。」
 長官は、黙ってジュンの肩をつかむと、二人して部屋を出て行った。      

ユリカ編 了
2002.08.20.(火)                

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