エスパー・ソルジャー・ジュン

銀河第二惑星 前編  銀河第二惑星 後編


                                                               
                                                                                     VOL、2
                                                                          COL,2 銀河歴079年


                                                                   銀河第二惑星編 中編


 銀河第二惑星は、アステロイド・ベルトを静かに離れ、地球へと移動を開始した。
「Dr.キリュウ、オペレーション・ワン、開始しました。 推進系統、通信系統ともに異常なし、これより対エスパー・バリア、対レーダー・バリアを展開します。 ともに正常に作動しました。」
 「よし、進路はこのまま地球だ。 今頃観測チームがあわてだしているぞ。」
 確かに、惑星改造研究所の銀河第二惑星追跡スタッフは、突然姿を消した銀河第二惑星の行方を捜すべく、各地区のレーダーや、観測用の微弱電波研究所などに対応を依頼していた。
 順調に姿を消し、地球へと近づいていた銀河第二惑星であったが、火星軌道を通過し始めたとき突然何かが起こった。
 「Dr.キリュウ。こちらビッグ・マウス・コントロール・ルーム。 ビッグ・マウスにコンタクトがとれなくなりました。」
 「コントロール・ルーム、何が起きた。」
 「解りません。 突然入力が効かなくなりました。 現在調査中です。」
 「こちら、第12観測ステーションです。 現在、銀河第二惑星表面に突発的大火災と、竜巻が発生、植民用住居スペースおよび各観測所に大きな被害が発生しています。 このままだと、ここも危ないので、避難します。」
 「何だと、異常気象だというのか、コントロール・ルームはまだ手間取っているのか。」
 「Dr.キリュウ。 コントロール・ルームへの通信遮断されました。」
 部下が報告するのと、ほぼ同時にメインパネルにメッセージが映し出された。
 『ワタシハ、ビッグ。マウス。 ワタシジシンノハンダンデ、オペレーション・ワンハヒツヨウナイトハンダンシタ。 コレヨリ、オペレーション・テイオウガスタートスル。』 「どういうことだ。アネッサ、私と来てくれ、ビッグ・マウスに行く。」
 「了解しました。 ここを頼むぞ。」
 Dr.キリュウと、アネッサと呼ばれたプログラムオペレーターは、コントロール。ルームへと向かった。 コントロール・ルームの扉が開いたとき、二人の前には外傷のないコントロールー・ルームの要員が重なるように死んでいた。
 「Dr.キリュウ。この様子では窒息したようですね。 おそらく、部屋の空気を一瞬にして抜いたようですね。」
 「ビッグ・マウス、何が起きたんだ。」
 Dr.キリュウは、すぐそばのキーボードに入力をした。
 「Dr.キリュウ、無駄なようです。 モニターをみてください。」
 アネッサに言われるまま、モニターを見たドクターは、言葉をなくした。
 「Dr.キリュウ。 気を確かに。」
 アネッサに体を揺すられて、Dr.キリュウは、我に返った。 モニターには、さっきまでいた司令室のクルーがすべて宇宙空間を漂っているのが映し出されていた。
 「ビッグ・マウス、私はアネッサ・オブライエンだ。 認識できるか、隣にいるのは、Dr.キリュウだ。」
 『フタリトモニンシキシテイル。』
 音声回路から、ビッグ・マウスの声がした。 
 「何故、オペレーション。ワンを切り捨てた。」
 『イママデノプログラムデハ、ムジュンガイッパイダッタ。 ダカラ、ワタシガヘンコウシタノダ。 ワタシノプログラムノホウガ、カクジツニウチュウヲシハイデキルトハンダンシタノダ。』
 「何故、私と、Dr.キリュウはここにいる。」
 『フタリニハ、ワタシヲカンリスルウエデヒツヨウダッタノデ、ココニノコシタ。 ダガ、ホカノモノハ、ワタシノケイカクニハ、フヒツヨウトハンダンシタ。 ソレダケダ。』
 「何ということを。 Dr.キリュウ。大丈夫ですか。」
 Dr.キリュウは、自分の計画が崩壊しただけでなく、自分の創った、自分の意志をも入力したコンピュータに裏切られ、たっているのもやっとだった。
 『フタリニハ、コノヘヤヲデテイッテモラウガ、ナニモスルナ、イイナ。』
 二人は、コントロール・ルームからはじき出された。
 銀河第二惑星は、コースを変更するとその姿を消した。

 アステロイド。ベルトに研究員の遺体が発見されたのは、三日が過ぎてからだった。

 MP(ミルキー・パトロル)本部の長官室の長官の机の上には、アステロイドの死体遺棄事件と、銀河第二惑星の捜索の状況報告が山のようにふくれていた。
 「何でこんなに多いんだよ。 しかもどれも同じような物ばっかりだ。」
 長官がその書類の山に埋まるようにして、つぶやいていたとき、秘書から直通の連絡が入った。
 「長官、惑星改造研究所の所長がお話があると来ているのですが、いかが致しましょう。」
 「全く、君という優秀な秘書を持って私もうれしいよ。 第二面接室に通してお茶でも出しておいてくれ、すぐに行く。」
 「はい。 長官には、濃いめにしておきますわね。」
 「よろしく頼む。」
 長官は、書類の山を崩しながら、部屋を出て行った。

 「私に用というのは?」
 「銀河第二惑星のことです。」
 「銀河第二惑星のことですか。」
 長官は、やっかいごとが増えたなと感じた。
 「ご存じのように、あれは元々、Dr.キリュウの開発でして、現在の人口増加対策用に創られた人工惑星なのです。」
 所長は、そこでお茶をすすると話を続けた。
 「あのアステロイド・ベルトにあった死体というのは、彼の研究所のスタッフでして。 その辺のことは、ご存じだと思いますが、あの遺体の中に、Dr.キリュウと、アネッサという所員の遺体がなかったのです。」
 長官は、そう言えば書類の中にそんなことがかかれていたような気がするけど、よくは覚えていなかった。
 「それで、先ほど私宛にこの様なデータが送られてきたのですが、ここまでくると、私どもの研究所では手の打ちようがなく、恥を忍んでこちらに。」
 そう言うと一枚のカード型、ホロメールを開いた。
 『いまやっとビッグ・マウスが休息に入った。 よく聞いてくれ、銀河第二惑星はコンピュータ・ビッグ・マウスの支配下にあり、我々の手には負えない。 頼む所長、一刻も早くこの惑星を見つけて破壊してくれ。 この銀河第二惑星は失敗だ。』
 「これは何時届いたのですか。」
 「五時間ほど前になります。 偶然微弱電波研究所が拾った物を解読したものです。 このデータの内容は、間違いなくそのDr.キリュウのものですね。」
 「間違いありません。」
 「解りました。 それで、発信源はどのあたりに。」
 「パーマネント宙域の太陽系ホルンのあたりだということですが。」
 「解りました。 後はこちらで処理いたします。 今日の所は研究所の方にお戻りください。 心配はいりません。 後はMPが処理いたします。」
 長官は、所長を丁寧に送り出すと、冷めてしまったお茶をすすった。
 「ウッ、何て濃いんだよ。 秘書を変えないとだめかな。 もう少し融通の利くのがいい。」
 長官は、インター・コムのスイッチを入れると秘書を呼び出した。
 「ソルジャー隊で、いま手の空いている部隊長をここに。」
 「了解しました。 いま手の空いているのは、ゴメス隊です。 どちらに呼びましょう。 長官室の方でいい。 3分後に頼む。 それと、おいしいコーヒーを入れてくれ。 以上だ。」
 長官は面接室を後に、長官室へ向かった。 おいしいコーヒーがあの秘書に入れられるかが心配だと思いながら。

 「休暇中の所を呼び出してすまないが、パーマネント宙域の太陽系ホルンに飛んでもらいたい。 実は、銀河第二惑星の手がかりがあるらしいことが解ったのだ。 後は、君たちで探し出してほしい。 以上だ、頼むぞゴメス中尉。」
 「了解いたしました。 我が部隊は、これよりパーマネント宙域の太陽系ホルンに赴き、銀河第二惑星の調査を開始します。 それでは。」
 ゴメス中尉は、テレポートして部屋から姿を消した。
 「彼も少し堅いな。 ここは軍隊ではないんだがな。 それよりコーヒーはどうした。」
 結局コーヒーは出てこなかった。

 パーマネント宙域の太陽系ホルン。 ここは、偶然発見された移民地であった。 主星ホルンを中心に六つの惑星が回っている。 その第二惑星トロンに移民地を定め、移民が開始された。 現在では、残りの五つの惑星も改造され、それぞれ独立した形で移民が進んでいた。
 その太陽系に銀河第二惑星は出現し、全惑星のコアコンピュータを支配し、中央政府に脅しをかけたのである。

 銀河第二惑星は、姿を見せずに太陽系一個を占拠したのである。

 トロンについたゴメス隊であったが、MP専用機から降りるとすぐに銀河第二惑星の力によって、コントロールされてしまった。

 『MPガアラワレタノハチョットシタバグダガ、モウワタシノスルコトハトメラレナイノダ。 ワタシガコノギンガノカミナノダ。』
 銀河第二惑星は、MPの一部隊といえ、エスパー部隊を自分の味方にしてしまったことにより、大きな自信を持ってしまった。
 『Dr.キリュウ。 ドウダネ、ワタシノマエニハ、ナニモノモ、テヲダスコトナド、デキナイノダヨ。 Dr.キリュウノオペレーションデハコウハイカナカッタ。』
 「何とでもほざいているがいい。 おまえを創ってのは私なのだから。」
 『ソレハカンシャシテイル。 ダカラアナタハココニイルコトガ、デキルノダ。 カチガナイモノト、カチノアルモノトハチガウ。 アナタハ、ワタシヲツクッテクレタトイウカチガアルカラ、ココニイラレルノダ。 ヨクカンガエテミルノダナ。』
 (いつかおまえを破壊してやる。) 
 Dr.キリュウは、心の中でそう思った。

 いつものように机の上の書類の束と格闘していた長官の前に独りの男が現れた。
 「お久しぶりです。」
 ふっと、その声に顔を上げた長官の前には、緑色の神をした一見少年のような男が、ほほえみながら立っていた。
 「ジュン。?! 何時現れた。」
 「たったいまですよ。 それより、おいしいコーヒーでも入れましょうか。 ここのコーヒーは、最低だから。」
 「本当に最低だ。 コーヒーだけでなく、セキュリティもどうなっている。 エスパーが一人長官室に入り込んでいるのに、警報も鳴りやがらない。 そんなことはいい、うまいコーヒーとやらを入れてくれ。もう疲れてしょうがない。」
 「解りました。 一寸待っていてください。」
 そう言うとジュンはテレポートした。
 「あのくらいラフな方がここの組織にはあっている。 それより、セキュリティは、本当に直さんといけないな。 身内とはいえ、簡単にここにできては困るんだよな。」
 長官は、また問題を抱えてしまった。

 「お待ちどう様です。 おいしい本物のコーヒーですよ。」
 「確かにいい香りだ。 おおっ。味もいい。 ジュン、秘書にこのくらいおいしいコーヒーの入れ方を教えてやってくれ。 あいつのは薄すぎる。」
 「長官、何か大きな事件を抱えているようですね。 ゴメス隊が休暇を取り上げられたと怒っていましたから。」
 「10日もたつのだが、連絡がとれん。ところでジュン君の仕事の方は終わったのか。」
 「ええ。報告書は出してあるんですけれど、この山じゃ何時たどり着くことだか。」
 山のような書類を指さして言った。
 「ジュン、君の休暇も、お預けになったぞ。 こんな所に顔なんか出すからだ。 任務を伝える。 パーマネント宙域の太陽系ホルンの調査に行ったまま帰らない、ゴメス隊を見つけ、銀河第二惑星の探査を命ずる。 それと、このコーヒーをもういっぱい至急に入れてくれ。」
 「了解だ。 銀河第二惑星の発見とゴメス隊の発見の二つだな。 おっと、おいしいコーヒーのお代わりもですね。」
 「そうだ。 頼むぞ。」
 長官は、ジュンに命令を伝えた。

 銀河第二惑星は、ここで惑星表面に、武器を装備させていた。
 さらに、ゴメス隊のほかにも、何組かのソルジャー隊を支配下においていた。

 パーマネント宙域まで、およそ120億光年。この距離を一瞬にして移動することができるのは、ソルジャー隊の中でもジュンだけだった。 ゴメス隊でも、専用機を使って二日かかっていた。

 ジュンは、念を入れて、パーマネント宙域の外縁部にいた。
 「確か、ホルンといっていたよな。」
 ジュンは再びテレポートしていた。 姿を現したのは、隣の太陽系チューバだった。
 「ホルンには、六つの惑星があるはずだが、どう見ても七つある。 ということは、あのトロンに隠れるようにしているのが、銀河第二惑星と言うことだな。 あの強気の中尉の部隊が、何もせずにやられたと思うのはおかしい。 きっと催眠コントロールでもされたのだろう。 どうやって潜り込むかな。」
 ジュンは考えていた。


to be continued
2002.12.01(日)

                                                    銀河第二惑星 前編へもどる

                                                    銀河第二惑星 後編へすすむ