エスパー・ソルジャー・ジュン

エスパーソルジャージュン 

銀河第二惑星 前編  銀河第二惑星 中編



                             
                                           VOL、2
                                      COL,2 銀河歴079年


                                銀河第二惑星編 後編


 『Dr.キリュウ、起きルンダ。 ナニモノカガワタシニ近づいてキテイル。シカモ、ワタシノ催眠波ニモハンノウシテイナイ。 ヒジョウニキケンダ。スミヤかにハイジョシテクレ。』
 「対エスパー・バリア、対レーダー・バリアを展開しつつ、敵の侵入に備えろ。念のため、総員対エスパー装備をして、待機。 まだ、モニターに写らんのか。」
 『Dr.キリュウ小細工はヨクナイ。 テキハまだナニモシラナイノダカラナ。 総員にソウビノ解除ヲツゲヨ。 アトハナントカスル。』
 ビッグ・マウスは、パネルに接近してくるジュンの姿を映し出した。
 『近づいてくるがイイ。 ココガキサマノ最期の地となる。』
 ビッグ・マウスは、その姿を見つつ作戦を考えていた。
 「Dr.キリュウ。こちら観測班。敵の正体が分かりました。 エスパー・ソルジャー・ジュンです。 」
 「何だと。 ソルジャー・ジュンが来たのか。 ビッグ・マウス。 どういたしましょう。」
 『ココニおびき寄せルノダ。 そして、ワタシが壊れてイルノヲ直しているフリヲスルノダ。 絶対にコチラから手をダスナ。』
 Dr.キリュウは、ジュンが来るのを待った。

 「あれか。銀河第二惑星というのは、かなりのものだな。 さてと、どういたしましょうかね。」
 ジュンは、銀河第二惑星のすぐ側まで転移していた。
 「バリアもかなりのものだが、このくらいなら如何というものでもない。 それよりもいかにも入ってくださいというように壊れていますな。 ではそこから行きますか。」
 ジュンは、罠ともとれる壊れたところから中に入った。

 『Dr.キリュウ。 奴が入り込んだぞ。 解っているな。』
 「解っております。ビッグ・マウス。」

 ジュンは、迷路のような通路をメインコアに向かって進んでいった。
 時々、何かがはじけ飛び、いかにも故障していますといわんばかりであった。
 やっと、通路の先に扉が見えた。
 注意深く中に入ったジュンは、部屋の様子に驚いた。
 何人かの研究員が倒れ、部屋中に煙が漂っていた。
 「大丈夫か。」
 ジュンが側に倒れていた研究員に近づいて声をかけたが、すでにその研究員は死んでいた。
 「ちいいぃぃ。誰か生きているのはいないのか。 おーい、大丈夫か。」
 ジュンは、ひときわ大きなコントロールパネルの前に倒れていた男に声をかけ近づいた。
 「あなたは、Dr.キリュウですか。」
 助け起こした顔を見てジュンは声をかけ直した。
 「Dr.キリュウ。 まだ息がある。とにかくこの部屋を出なくては。」
 ジュンは、Dr.キリュウを担ぐと部屋を出た。
 煙の来ない通路にDr.キリュウをおろすと、ジュンは再び声をかけた。
 「あなたは、Dr.キリュウですね。 大丈夫ですか。」
 ジュンに揺り起こされて、Dr.キリュウは目を覚ました。
 「・・・ここは、それよりワタシは・・・」
 「Dr.キリュウ。 もう大丈夫です。 私は、ソルジャー・ジュン。 あの部屋の様子では窒息しかけたようですね。 おそらく、あの部屋にいた他の人たちはだめだったようですが、何をなさっていたんですか。」
 「ジュンとか言ったね。 私の作ったコンピュータ・ビッグ・マウスが、制御できない状態になり、そのオーバーロードを何とかしようとしていたのですが。」
 「そうだったんですか。」
 ジュンはとっさに接触テレパスで、Dr.キリュウの心を覗いたが、そこには何も無かった。
 「それで、そのビッグ・マウスは直ったのですか。」
 「まだだめです。もう一息なのですが。」
 「私がやってみましょう。 ビッグ・マウスは、どこです。」
 「さっきの部屋が、コントロールルームです。 本体は、さらにそこから下に二階層降りたところにあります。 そこにたどり着ければ直接コントロールできるのですが。」
 「Dr.キリュウは、しばらくここで休んでいた方がいい。」
 「頼みます。」
 ジュンは、Dr.キリュウに軽い電撃を浴びせ、ショックを利用して、ビッグ・マウスの催眠から切り離すと、銀河第二惑星からホルンへとテレポートした。
 「とりあえずDr.キリュウは何とかなったな。 後は、ビッグ・マウスだ。」
 ジュンは、二階層下にテレポートした。

 「ここが、本体のコントロール・ルームだな。」
 コントロール・ルームにテレポート・アウトしたジュンの前に不意に三人の男が姿を現した。
 「ジュン、久しぶりだな。 ここから先には行かさないぞ。」
 「参ったな。 君たちとは戦いたくはないのだけれど、しょうがないな。」
 「いくらジュンといえども、我らの三位一体の攻撃に耐えられるかな。 いくぞ。」
 三人は、手を組み念を一つにあわせ、ジュンに向かってエネルギー・衝撃波を浴びせた。
 それぞれの力は低くても、三人が一緒になったその力は強く、ジュンは後方の壁にたたきつけられた。
 「すごいものだ、三位一体がこれほどとは、ちいぃぃぃ。 まだ撃ってくるかよ。」
 ジュンは、エネルギー・バリアを張りつつ次の手を考えていた。
 「今だ。 ライトニング・アロー。」
 ジュンの両手の間から、光の矢が造られ、三人に向かって放たれた。
 「なに! うぐっ。」
 「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
 「あぐっ」
 三人は、光の矢を受け、その場に倒れた。
 ジュンはとっさに、三人をテレポートした。
 彼らが消えるのとほぼ同時にいままで三人が立っていた場所が焦げ、大きな穴があいた。
 「これで貴様を守るものはなくなったようだな。」
 『何を言ッテイル。 キサマコソ、私の中にトジコメラレテイルコトヲ忘れては困る。』
 「先ほどの戦いで、貴様の武器のコントロール装置はすべて壊した。 それでもまだ強がるのか。」
 『・・・。 確かにそのようだな。 ダガ、後ロヲミルガイイ。』
 後ろを振り向いたジュンは、巨大なプラスター・キャノンを抱えて、こちらに照準をつけているアネッサだった。
 彼は、その意志をすべてマウスによってコントロールされているようだった。
 『アネッサ、ジュンの頭に銃口を着ケルノダ。 私ノ合図で撃て。』
 「それができるかな。」
 ジュンは近づいてくるアネッサを待った。 やがて銃口がジュンの頭部に押しつけられたそのときだった。
 銀河第二惑星の外縁部分で爆発が起きた。
 『何。』
 それは、ジュンが仕掛けた小型の爆薬だった。 その一つが念動によって、爆発し、さらに付近の部品が連鎖爆発したのだった。
 その衝撃が、人形と化したアネッサのバランスを崩した。
 その瞬間ジュンは、衝撃波をアネッサにたたきこみ気絶させると、テレポートした。
 「ビッグ・マウス。今度こそ、貴様の最後だ。」
 『どうかな。』
 ビッグ・マウスは、自ら推進装置を作動し、この宙域を離れ始めた。
 「どこに移動しようと、私には無駄だよ。」
 『なら、これでどうかね。』
 いつまにやら、ビッグ・マウスの周りに対エスパー・シールドが張り巡らされた。
 さらに、学習が進んだのだろう、その言葉遣いも、人間の会話になっていた。
 「エスパー・シールドか、考えたようだな。 だが、これではどうかな。」
 ジュンは、サイコ・セイバーを造るとビッグ・マウスめがけて、投げつけた。
 一つ、又一つと、サイコ・セイバーがバリアにはじけ火花が散った。
 『無駄だよ。 それより、そんなにエネルギーを消費して、どうするのかね。』
 「まだだよ。 貴様のバリアに小さな穴があいたのを気づいたかな。 それで、こうするとどうなるかな。 エネルギー・吸収・ボール。」
 ジュンは、暗黒のもやもやしたボールをその小さな穴に詰め込んだ。
 バリバリという空間を裂く音と、放電による振動がその部屋を包んだ。
 辺りは、弾けた放電により、計器がダメージを受け、火柱があがっている。 自動消火装置が始動し、薬剤が降り注いでいる。
 「ビッグ・マウス、これで終わりにしよう。」
 ジュンは、高純度エネルギーによるサイコ・セイバーをビッグ・マウスの中枢部にぶつけた。 火柱がさらに大きくなり、消化剤が底をついたのだろう。 部屋の扉が閉まり、部屋の空気が抜け始めた。
 『さすがにすごいエスパーだ。 ・・だが・わ・・たしは・・まけ・・・な・・のだよ・・・』
 ビッグ・マウスは、そういうと崩れていった。
 「やったな。」
 ホッとしたのもつかの間だった。 すべてを統括していたビッグ・マウスが壊れたことによって、銀河第二惑星は、コントロールするものを失い、銀河を爆走し始めたのだった。
 「しまった。 あいつの言っていたことはこのことだったのか。」
 ジュンは、真空になり、炎の消えた部屋のコンソール・キーをたたいていたが、そのすべてが、効かなかった。
 「このままにはできない。 どうすればいい。 そうか、推進用のエネルギーを吸収してしまえば、速度が落ちるはずだ。 とりあえず、そこからだな。」
 ジュンは、推進エネルギーパイプを切断し、さらに特大のエネルギー・吸収ボールを、ノズルにぶち込んだ。 やがて、銀河第二惑星は、その速度を落とし始めた。
 「このままにしておく訳にはいかないな。 いまでもスター・ダストを集めているということは、重力・ジェネレーターが生きているということだ。 しかも、それをコントロールしていたビッグマウスが潰れたのにも関わらず、分解しないということならば、完全な破壊はできないな。」
 ジュンは、パネルを見上げた。 そこに映し出されたのは、白鳥座のブラックホールだった。
 「ブラックホールか。 こうなったら、こいつをエネルギー・吸収・ボールで包み込んで、ブラックホールの中に浮かべたままにしてやる。」
 ジュンは、部屋から宇宙空間にてレポートすると、銀河第二惑星をエネルギー・吸収・ボールで包み込んだ。 さらに、エネルギー・吸収・ボールを圧縮し、ブラックホールにぶち込んだ。
 この銀河から恐怖が消えた。

 その後。
 「長官。おいしいコーヒーが入ったんですけど一緒に飲みませんか。」
 「ああ、ここらで休憩にするかって、どうやってここに入った。 又、問題が増えたな。 本当にここのセキュリティ・システムを改善しなくては。」
 「まあまあ、それよりどうなりました。」
 「Dr.キリュウは、人格改造で、何とかなった。 あの頭脳を無くすわけにはいかないからな。 それと、重力・ジェネレーターは、改良されて、使われるようになった。 ジュンが惑星に転移させたソルジャーと研究員は、無事に回復し、時期に実践参加というところかな。」
 長官は、コーヒーを一口すすった。
 「やはりコーヒーは、こうでなくてはだめだ。香りと、深み、この調和が大切なんだがあの秘書にはわからないらしい。 ところでジュン。 銀河第二惑星はこちらには出てこないのだろうな。」
 「おそらく、大丈夫ですよ。 ただ、僕以上のエスパーか、とんでもない天変地異でも起きれば別ですが。」
 「なら大丈夫だな。 それよりお代わりはあるかな。」
 「どうぞ。」
 そのとき、突然長官室のドアが開いた。
 「まあ、何ですかこのにおいは。 それと、早くサインしてください。 滞っているんですから。 ジュンさん。勝手に入らないでくださいって何度いえばわかるんですか。 喚起はしてください。 あーもう、このにおい嫌い。」
 「そう怒るなよ。 君もコーヒーでも飲んで落ち着きたまえ。」
 「私は、コーヒーより、紅茶の方が・・・」
 「では、このアッサム・ティーなどどうです。 私が入れたのですが。」
 「まあ、少しくらいなら、休憩してもいいですよね。」
 三人は、コーヒーと、紅茶で休憩をとった。


銀河第二惑星 了
2003.01.03(金)

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