エスパー・ソルジャー・ジュン

紅蹴会 

エスパーソルジャージュン


                             エスパーソルジャーJUN
                                  VOL、4
                             COL,19 銀河歴507年
 
                         巨人ゴーフル 前編
 

 

 銀河古代史の中にこの様な章がある。
 『昔、まだこの銀河が生まれて間もない頃のことである。
 火生ずる所より遠く、白き光満ちるところありき、その中に独りの巨大な男の姿ありける。 その男怒髪天をつき、遙か彼方より、その姿を見ることができるという。
 その男、山鳴動しても鳴かず、海泡立ちても動かず、風吹き荒れるもその身を任せ、 竹林のごとく制止していた。      だが、ことあればその男ことの全面に立ちて、ことを鎮める。
 しかし、男の歩むところ、山は鳴き、海は泡立ち、風は吹くことも忘れ、大地はその動きに合わせ大きく移動した。   星は砕け、光は去り、暗闇は消えていく。 
 その男の名は、ゴーフルという。 
 ゴーフルは、時の始まりから終わりまで、宇宙の始まりからその終わりまでの全てを知っている。 ゴーフルは、この世の全ての知識を蓄えているが、その使い方は知らなかった。 ゴーフルは、悲しき男でもあった。                   この男を倒したものは、この男の持っている知識の全てを得ることができるであろう。』
 

 

 銀河歴507年。
 人類は、宇宙について何も知らなかった。 いや、知っているつもりであった。
 地球連邦の中でも最も遠い、深宇宙の中にある太陽系国家アウトバーン。G型恒星アンデモンを中心とし、海洋生物星のトレネード、野生動物星の大王、原生植物星の小王、国家・政治拠点のアウトバーン、居住星のスニール、ギャンブル星の中王、天体観測・軍事の迷王の七つの改造惑星で構成されていた。 人々は、それぞれの星へレクリェーションをかねて行き来していた。 典型的なリゾート国家である。 
 そんな平和なアウトバーンに突如宇宙を震撼させる不気味な震動が伝わってきた。 まづアウトバーンがその輝きを失った。人々は一瞬にして起きた出来事に、パニックになった。 迷王が、亜空間通信で連邦本部に打電を入れるものの、一つ、また一つと、各惑星が沈んでいった。 連邦本部からの返信が届いた瞬間、最後に残っていた迷王が消滅した。 アウトバーンにいた人々は、誰一人として、太陽系外に脱出することができなかった。
 

 

 地球連本部は、この事態を重く考え、各太陽系国家に防宙警戒を強化するべく通達し、アウトバーンへ事故調査委員を派遣するべく対応していた。 各太陽系国家は、自分の所は大丈夫だと思い、せいぜいパトロールの強化を行うくらいだったのだが、そんな中、太陽系国家ユニコーンが、何かと戦い、消滅したのである。
 しかし、この時の様子が、一枚であったが、連邦本部に通信されていた。 その一枚の写真には、宇宙全てを覆うかのような不気味な影だけが映っていた。
 連邦本部化学分析班は、その一枚の写真をもとに、身長およそ17宇宙キロメートルの巨大な物体であると判断した。 分析が続いている間にも5つの太陽系国家が消滅していった。 だが、その消滅寸前の通信から、巨大な物体が人型をしていると推測されたのである。 巨人と呼ぶにふさわしい物体の出現を連邦本部は、公表することを控えた。 人々には、謎の暗黒物質が太陽系国家を消滅したと報道し、再結成されたエスパーソルジャー隊を召集し、作戦が練られた。
 こうしている間にも3つの国家が沈黙し、定期航路にあった780隻の宇宙船が消え、人々が消えていった。
 分析班は、消滅した国家と、定期航路から、巨人の進路をはじき出した。 それは、銀河平面から地球のある太陽系を通過し、銀河平面の反対側に抜けるというコースであった。 
 召集されたソルジャー隊は、次に現れると思われる太陽系鈴鹿へと向かっていった。
 

 

 ソルジャー隊旗艦ランナバウト。
 「隊長。巨人というのは本当ですか。」
 「まず間違いないだろう。 自分も電送写真の分析画像を見たが、どう考えても人なんだ。 大きさが問題だが。」
 ランナバウトの作戦会議室に今、6人のソルジャーが集まっていた。
 「この作戦では、我々はどうあっても、巨人のコースを変えることが第一である。 もし、しくじれば、現在の植民惑星及び太陽系国家の3/2が消滅することだけは事実である。 各班ごとに分担を指示しているが、各班長の指示で臨機応変に行動するよう連絡してくれ。 いいか、失敗はないと思ってくれ。 以上。」
 隊長のロビンソンは、そう指示すると作戦室を出ていった。 残った各班長は、もう一度自分たちがどうすればいいのか、確認すると、作戦室をあとにし、各班へと分かれていった。
 「艦長後どの位だ。」
 「隊長、デスアウトまで約一分。 鈴鹿太陽系まで60分という位置ですか。」
 「よし。」
 隊長のロビンソンは、艦長席の隣に腰を下ろし、メインスクリーンに映る亜空間を見つめていた。
 鈴鹿太陽系。 この国家は馬の首暗黒星雲の裏側にあり、地球と、暗黒星雲の反対側への連絡拠点になっている国家であった。
 「艦長。 デスアウトします。」
 操舵士の声が静まりかえっている艦橋に響いた。
 ランナバウトは、静かにデスアウトした。
 「よし。 操舵士、目標を鈴鹿太陽系から銀河平面に向かい、300光年の所とする。 座標、004−F−224だ。」
 「座標004−F−224セット完了。」
 ランナバウトは目標地点に到達した。
 「これより、対巨人殲滅作戦を行う。 各員、それぞれの持ち場に散り、速やかに作戦を遂行する。 作戦開始。」
 ロビンソンの号令の元、ソルジャー隊は、各持ち場に移動していった。
 

 

 『進行を妨げられ、怒れる男となる。 しかし、誰もその進行コースは変えることはできず。 進行を阻止しようとしていた人々は宙に舞い、星は無に還っていった。 力尽き、途方にくれる人々の中、神に護られし若者突然出でて、ゴーフルに闘いを挑む。 神に護られし若者、勇敢に戦うが、男の前にその力尽き、世界は終焉へと向かう。』

 

 「隊長。 巨人出現しました。 座標003−F−220。 ソルジャー・ブラボーの前、2000宇宙キロ。 ソルジャー・ブラボー作戦にかかりました。」
 「よし、うまく移動だけでもしてくれよな。」  
 「ブラボー、マジにデカすぎないか。」
 「やれるのかよ。」
 「コースの変更なんてこの大きさのやつにできるのか?」
 ブラボーを班長とする隊員が口々に叫ぶ。
 「一点集中。 サイコキネキスで、やつを動かす。 我ら四人でやれば何とかなるだろう。 いや、チーム・ブラボーでやるんだ。 他の奴らに手を出させるなよ。 ポイントは、右足とする。 私の合図で作戦開始。 3・2・1開始。」
 チーム・ブラボーの四人は、サイコキネキスで右足をねらった。 
 「うぐっ」
 「げほっ」
 「な・なんて力だ。」
 「くそったれ。 他の奴らは何しているんだ。」
 右足一本の角度を変えようとしていたチーム・ブラボーであったが、全く何もなかったかのようにゴーフルはまっすぐ足を踏み出そうとしていた。
 「遅くなった。」
 チーム・デニーロが駆けつけ、ブラボーに力を貸した。
 「デニーロか。 助かったぜ。 お前らもデニーロのチームに負けるんじゃねぇぞ。」
 「おう。」
 チーム・デニーロがチーム・ブラボーの各隊員と一緒に右足をねらう。
 「すげぇ。 このままではだめだ。」
 デニーロはうめいた。
 そこに、残っていた4つのチームが合流した。
 6つのチーム、計24人のサイコキネシスが、ゴーフルの右足に集中するが、何事もなかったかのように真っ直ぐ歩みを進める。
 「隊長。 このままでは手に負えません。」
 ブラボーが脳波で隊長に叫ぶ。
 「作戦変更だ。 各自頭をねらえ、ショツクを与えるんだ。 怯んだ隙にコースを変える。」
 「了解。 エネルギー・衝撃波だ。 頭をねらえ。」
 各チーム・リーダーが叫ぶ。
 今まで足に集中していた隊員たちは、エネルギー・衝撃波を頭に向かって放出し始めた。 一瞬、ゴーフルは、立ち止まったが、頭をぼりぼりとかくと、再び真っ直ぐ歩き始めた。 「畜生。 やつには、衝撃波も蚊に刺されるよりも下ってことかよ。」
 「きかねぇ。 それより、こっちの方がだめだぜ。」
 ジュンは他の隊員を見た。 サイコキネシスとエネルギー衝撃波を続けざまに全力で出した隊員のほとんどは疲れ切っていた。 気力だけで立っている隊員も何人かいるのが判る。
 「隊長。 これ以上は無理です。」
 デニーロは、隊長に報告した。 その時だった。
 ゴーフルが突然ほえたのだった。
 「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…」
 その声は、宇宙が裂けるかとも思われる大きさと、振動を持っていた。
 耳を押さえても、その声は響いてきた。 
 「す…すごい衝撃波だ。 鼓膜がいかれちまっ…」
 デニーロがふと顔を上げたとき、鈴鹿太陽系の太陽鈴鹿が砕け飛び散った。
 「全員、テレポートしろ。 何処でもいい、ここから離れるんだ。 太陽の破片が来るぞ。 合流先は、旗艦ランナバウト。」
 デニーロはそういうと、傍でぐったりしていた隊員を抱えテレポートした。 テレポートした瞬間、その場は太陽の破片が火の玉となって襲っていた。
 

 

 旗艦ランナバウト。
 「無事ここにたどり着いたのは18人か。」
 隊長は、ランナバウトをテレポートし、破片の飛んでこないぎりぎりのところで隊員を待った。 1時間が過ぎ、ちりぢりとなったソルジャー隊は、一人、また一人と、やっとの思いでランナバウトにたどり着いた。 以後の隊員がぼろぼろになって姿を現してからすでに1時間が過ぎようとしていた。 太陽鈴鹿は、完全に粉砕され、今は大きな黒い穴のようになってそこにあった。
 「艦長。 ランナバウトを座標003−F−220に進行させてくれ。 我々は、あの巨人に負けた。」
 隊長のいうとおりであった。 24人いたソルジャー隊員が18人となり、そのうち8人が意識が無く、傍にいたソルジャーによって運ばれたのであった。 また、運んできたソルジャーもその大半は、立つこともできないほど、エネルギーを消耗していた。
 その中でデニーロだけが、ふらふらとしながらも、自力で再生していた。
 「艦長、我々は無駄にここに来たのか。」
 「隊長、そんなに深刻にならんでください。 やつの実態が分析できただけでもよしとしなければいけません。」
 艦長は、疲れている隊長にこういうと、クルーに向かって命令を発した。
 「この宙域に、ここにたどり着けなかった隊員か、まだ生きているかも知れない鈴鹿太陽系の人を捜査する。」
 無駄だとはわかっていても、ランナバウトは、この宙域をさまよっていた。
 

 

 ソルジャー隊から連絡を受けた連邦本部は、緊急会議を開き、巨人の進行コースに当たる太陽系国家に対し緊急避難の連絡をした。 事態は、深刻なものとなり、一般人に隠しておけるものではなくなっていた。 各報道メディアは連日のように巨人の被害について報道し、その対処の遅れている連邦に対しても報道の対象にしていた。
 進行方向に当たる国家の人々は、パニックになり我先にと、スペースドックへ向かい安全と思われる太陽系に向け、シャトルが満員の乗客を乗せ次々と飛びだっていった。
 

 

 そして一週間が過ぎた。 その間連邦本部も巨人対策の会議を連日深夜まで開催していた。 だが、その間にも五つの国家が姿を消していった。
 煮詰まっていた会議の会場に一人の老公古学者が現れた。 
 「今は、会議中だ。 関係のない者は出ていってください。」
 議長の声にみんなは、はっとした。 考古学者が現れたことに気が付いていないほど疲れていたのである。
 「わかっている。 そこまで惚けてはいない。 資料を持ってきたのだ。」
 本部長は、その老人を会議の場に参加させた。
 「さて、すまないがここは、巨人対策本部ですが、どのような資料をお持ちになったのですか」
 本部長は静かに聞いた。
 「いや、これは失敬。 儂は、宇宙考古学研究所の田所と言うものじゃ。 持ってきたものというのはなぁ。」
 そういいながら、今では珍しい風呂敷から一冊の分厚い本を取り出した。
 「うちの研究員の一人が、この・・・銀河古代史を解析しとりましてな。 その中に巨人のことが書かれとるというのじゃ。」
 会議場が静かになり、田所という考古学者の話に耳を傾けた。
 「ところで、その銀河古代史でしたか。 それはどういうものなのでしょう。」
 「太陽系の金星に古代文明があったと言うことは皆さんご存じじゃろう。」
 会場がざわついた。
 「なんじゃ。 知らんのか。 まあよい。 もう一度勉強するのじゃな。 そこの第二文明というのがおもしろいじゃが、これもわからんようじゃからとばすとして、その第二文明の遺跡の中に何かわからん金属の箱に入っていたのがこれじゃ。」
 田所博士は、本をたたいた。
 会場は再びざわついた。
 「文字と思われるものは、くさび形文字と呼ばれているものと酷似し、その翻訳を現在いけっているわけじゃが、かなりの量になっておるために、発見から五年たった今でも完全には翻訳しきれていないんじゃ。 現在訳しきれている部分の中にこのようなものがあったのでここに持ってきたわけじゃ。 茶の一杯ぐらい頂けんかな。 年寄りにはきついは。」 「おい誰か、何か持ってこい。 今はどんな情報でもほしいときだ。 話を聞こう。」 本部長の一声で、お茶が運ばれてきた。 一息にお茶を飲み干すと、田所博士は周りを見回し、再び話し始めた。
 「何処まで話したかな。 まあよい。 この本には、我々の銀河の歴史が刻まれている。 銀河の発生から、終焉を迎えるまでの出来事がどうやら載っておるようなのじゃ。 その銀河古代史の百章に巨人ゴーフルというのがある。 今から詠んで聞かせるので、静かにしておるように。 『昔、まだこの銀河が生まれて間もない頃のことである。
 火生ずる所より遠く、白き光満ちるところありき、その中に独りの巨大な男の姿ありける。 その男怒髪天をつき、遙か彼方より、その姿を見ることができるという。
 その男、山鳴動しても鳴かず、海泡立ちても動かず、風吹き荒れるもその身を任せ、
 竹林のごとく制止していた。 だが、ことあればその男ことの全面に立ちて、ことを鎮める。
 しかし、男の歩むところ、山は鳴き、海は泡立ち、風は吹くことも忘れ、大地はその動きに合わせ大きく移動した。 星は砕け、光は去り、暗闇は消えていく。 
 その男の名は、ゴーフルという。 
 ゴーフルは、時の始まりから終わりまで、宇宙の始まりからその終わりまでの全てを知っている。 ゴーフルは、この世の全ての知識を蓄えているが、その使い方は知らなかった。 ゴーフルは、悲しき男でもあった。 この男を倒したものは、この男の持っている知識の全てを得ることができるであろう。
 だが一度動き出したゴーフルは、いついかなる時代に現れるかは、神ですら知らない。
 この話を聞き、知識を得ようと幾人かの勇者が挑戦するが、逆に進行を妨げられ、怒れる男となる。 しかし、誰もその進行コースは変えることはできず。 進行を阻止しようとしていた人々は宙に舞い、星は無に還っていった。 力尽き、途方にくれる人々の中、神に護られし若者突然出でて、ゴーフルに闘いを挑む。 神に護られし若者、勇敢に戦うが、男の前にその力尽き、世界は終焉へと向かう。
 だが、神に護られし若者、再び神の力により、新たなる力を持って甦る。
 神に護られし若者、再びゴーフルに戦いを挑む。 
 その戦いは七日七晩続き、銀河の端から端までのすべての星から戦いの炎が見えたという。 やがて、ゴーフルはその力尽き、再び無の中に戻っていった。
 また、神に護られし若者、血みどろになりながらも、雄叫びを挙げ、時間の流れの中に消えていった。』
 ここまでじゃ。」
 「田所博士。 この話は本当に過去に書かれたものなのですか。」
 本部長は、身を乗り出して聞いた。
 「今から数世紀は前に書かれたものに間違いはない。 もっとも金星人が今でも生きていたらはっきりするのじゃが。 そうもいかんしな。 今翻訳が終わっているところでも、かなり現在の我々の状況と重なる部分や、過去の部分と同じものがある。 最後まで訳さなければハッキリといえんのじゃが、この銀河古代史は真実を見てきたものが過去の時代で書いたものじゃ。」
 「田所博士。 神に護られし若者とはいったい・・・」
 「さて、銀河古代史の中には、名前のないものがかなりいてな。 誰と特定できるわけではない。 もしじゃよ。 もし、名前が出ていたとしても合致するものがこの銀河の中にいるのだろうか。 そんなことさえ解らんのが集まっているとは思わんかったが。」
 田所博士は、白髪の頭を左右に振って、嘆いた。
 その場にいたものは、黙り込んでしまった。
 「神に護られし若者は、死の淵から甦ったんですよね。」
 「ああ、そうじゃが。」
 「そのものが、ESPと言うことも考えられますよね。」
 「・・・考えてもいなかったが、・・・まあ、・・・そう考えてもいいだろうな。 君にしてはいい質問だったね。」
 田所博士は少しうれしそうだった。
 「いいですか。」
 「ESP研究所所長のウ・エン・リーだったな。」
 「はい。」
 まだ若い所長は、顔を赤らめているが、しっかりと立ち上がり、周りに一礼すると話し始めた。
 「先ほど、エスパーと言うことでもよいとおっしゃったので。 ただ現在何処にいるか分からないのですが、いや、生きているかも分からないですが、一人だけいるんです。 不死身のエスパーが。」
 「どういうことかね。」
 「旧エスパー・ソルジャー隊。 特Aソルジャー。 通称ソルジャー・ジュン。」
 「ソルジャー・ジュンだと。」
 「はい。 この銀河歴になってから起こった様々な事件には、必ずといっていいほど、その姿を現し、銀河の危機を幾度となく救っています。 但し、482年に起きた、Jr.パトリールによる銀河無力化計画を阻止してから今までその姿を消しています。 だが、彼が死んだという報告もまだ受けていませんので、おそらくどこかで生きているはずです。」
 「よし、田所博士の提出していただいた資料によって、相手がとてつもない怪物だと言うことが解り、我々だけの力では、どうにもならないことも解った。 巨人の名はゴーフル。 これより、ゴーフルの監視の強化と、ソルジャー・ジュンの捜索を行う。 必ず見つけ出せ。 以上。 解散する。」
 会議室から一人また一人と消えていく。
 

 

 4日が過ぎた。 その間ソルジャー隊は、ジュンの捜索に当たっていたが、それらしい人物がいるという情報を頼りに銀河系に散っていたが、そのすべてが別人だったり、過去の伝説だったりしていた。 また、田所博士は、銀河古代史の中にまだゴーフルに関係するところがないか、分析を続けていた。
 さらに4日が過ぎた。 ゴーフルは、この進路を変えることなく、まっすぐテラ太陽系を目指していた。 そして今、太陽系国家サンバーンに近づいていた。
 

 

 「よし、ここに防衛ラインを引く。 電磁バリアを三重に張り、バリアとバリアの間にスペース・ボムを隙間なく密集形態で散布。 そうだ、最前部のバリアの前に、廃棄船にショック・カウンターを積めるだけ積み、やはり密集形態で進路上に配置する。 各員協力しつつ、作業を急げ。」 
 「連邦の連中に後れをとるな。 サンバーン宇宙軍の意地を見せつけろ。」
 「了解。」
 サンバーン宇宙軍は、連邦宇宙軍よりも、確実に早く、ゴーフルの進行を止めようと躍起になった。
 やがて、ゴーフルが先端の廃棄船の塊にかかった。 すさまじい爆光と振動が太陽系に響き渡った。 
 「やったか。」
 そこにいた誰もがそう思った。 だが、電磁バリアが鈍い放電を放つのを見たとき、喜びは、絶望に変わった。 電磁バリアが破られ、スペース・ボムが爆裂し、再び電磁バリアが破られたとき、わずかだが、ゴーフルの歩みが止まった。 
 「ゴーフルの歩みが少し止まった。」
 「電磁バリアに感電したんじゃないのか。」
 「電磁バリアがやつに対して、有効ならば電磁砲スタンバレ。」
 連邦宇宙軍は、最新装備の電磁キャノンの照準をゴーフルに合わせた。
 「最後のバリアが突破されたと同時に砲撃開始、電磁コイルが焼き切れてもかまわん。 最大出力でやつの右足付け根に集中させる。」
 隊長の号令の元、一斉に電磁砲が最大出力で放出された。 だが、ゴーフルの叫び声に戦艦どうしが現状を維持できなくなり、互いにぶつかり、一瞬にして全滅した。
 しかし、この捨て身の攻撃は、功を奏し、サンバーン直撃のコースは、わずかだがずれ、太陽サンバーンとその国家惑星バンニングは、救われたのである。
 だが、ゴーフルはその歩みをテラ太陽系に向け、なおも進行し続けていた。
 
   
 
 
 
                                                                5.3.13記

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